フラックスは,被はんだ付け部の酸化膜を化学的に除去します.
高価な金系のろう材と金めっき母材の組み合わせや,水素などによる還元雰囲気を作り出す大がかりな装置を用意しない限り,フラックスなしではんだ付けはできないといっても過言ではありません.
●大きく三つのタイプがある
一般的なフラックスの区分の仕方には,古くから用いている方法として,R,RMA,RAタイプの三つがあります.
RMAやRAタイプは活性剤が入っており,洗浄能力と広がり性が増します.
普段使用するものは,活性度は劣りますが,はんだ付け後の腐食性や絶縁性が有利なRタイプの使用をお勧めします.
このRタイプは,はんだ付け後の洗浄も不要といった特徴があります.
- R :非活性ロジン系…活性材を含まない,洗浄しなくてもよい
- RMA :弱活性ロジン系…塩素(Cl)分0.14w%未満,洗浄した方がよい
- RA :活性ロジン系…塩素(Cl)分1.0w%未満,洗浄しなければならない
手はんだで使用するヤニ入り糸はんだは,一般的にはRまたはRMAタイプで,無洗浄に対応したフラックスを,はんだの中に個体に近い状態で挿入しています(図1).
ヤニ入り糸はんだを購入する際には,必ず無洗浄タイプであることを確認した方がいいでしょう.
図1 糸はんだの中にはフラックスが挿入してあるタイプもある
▲温度を加えすぎると活性力が失われる
フラックスは低い温度では活性力がなく,はんだ付けされる温度で最も活性度が高くなり,さらに高温になると分解されて活性力を失います.
そのため鉛はんだや鉛フリーはんだ,あるいは手はんだやリフローなどのはんだ付け方法,それぞれの融点や作業温度に合わせた,専用のフラックスを使用しないとうまくはんだ付けできません.
手はんだの作業中に温度が高すぎたり時間が長すぎたりして,フラックスの活性が失われ,うまくはんだ付けできないのもこういった理由です.
写真1はフラックスがきれいに流れて,フラックスの効果が十分に発揮されたものです.
これは非常に大事なことなので,このような作業ができるよう練習しましょう.<大西 修>
写真1 フラックスの効果を十分期待できる例