パッケージはプラスチック,熱で分解する
半導体部品のパッケージは熱硬化型プラスチック製です.その特性は図1に示す通り,ガラス転移温度(Tg)を超えると線膨張が6倍以上に大きくなり,脆くなります.また,およそ200℃以上で強度がさらに低下し,250~350℃になると分解を始めます.そのため,はんだこてで過熱している間に,リードに力を加えると,リード根元のプラスチックのクラックや剥がれにつながるので十分に注意しましょう.
図1 熱硬化型プラスチックの特性例 … 150℃を超えるあたりから一気にもろくなる
プラスチック・パッケージは水分を吸収する
また,半導体部品などのプラスチック・パッケージは,包装を開けて長く保管すると,空気中の水分を吸収(吸湿)することが知られています.この吸収された水分が規定量を超えて多くなったところに,パッケージが温められるようなはんだ付け温度に晒されると,パッケージ内部で気化・膨張します. このとき,パッケージのプラスチックも高温で脆くなっているため,パッケージがクラックし破壊に至ります.この現象を火山活動でおなじみの水蒸気爆発と言うこともあります.この水蒸気爆発は主に,パッケージごと温められるリフローはんだ付けなどで発生する現象で,パッケージの水分量がおよそ0.15%~0.2%を超えたあたりから発生するといわれています.この水分量の目安は,30℃,70%以下の常温・常湿に72時間程度以上放置したパッケージの内部に吸収される量に相当し(図2),吸収された水分は125℃程度の高温に10時間以上おかれないと放出されません.
図2 パッケージの吸湿特性例 … 水蒸気爆発はパッケージの水分量がおよそ0.15%~0.2%を超えたあたりから発生する
見た目はOKでも内部で壊れているかも
図3はICパッケージなどの半導体部品の水蒸気爆発による破壊のイメージ図です.この破壊は外部から見えるようなパッケージのクラックになるのはまれで,多くの場合は,外から見えない,ICパッケージ内部の破壊や品質低下になります. これらの安全条件は,各部品メーカごと,パッケージごとに異なり,それぞれの推奨温度や保管条件は,各メーカごとに公開されていますので,必ず確認しましょう.特に注意が必要な部品は,その包装状態でもある程度区別できる場合があります.ほとんどの場合,アルミ製の袋を使って包装していますので参考にしてください.<大西 修>
図3 水蒸気爆発によるパッケージの破壊イメージ