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ホーム > 記事サポート > 2009年 > 09月号 筆者インタビュー「ディジタル制御で広がるパワエレの世界」
 

特集の筆者に「ディジタル制御で広がるパワエレの世界」をインタビュー!

トランジスタ技術2009年9月号特集(8月10日発売)

 「ディジタル制御で広がるパワエレの世界」に合わせて,

筆者に次の内容をインタビューしました!

 

 

●質問内容

・ディジタル制御が席巻する(席巻している)と思われるパワエレのアプリケーションを教えてください

・それはなぜでしょうか

 

・アナログ制御でしか実現できないと思われるパワエレのアプリケーションを教えてください

・それはなぜでしょうか

 

・ディジタル制御のパワエレ開発でもっとも大変だったことは何ですか?

Q. ディジタル制御が席巻する(席巻している)と思われるパワエレのアプリケーションを教えてください

汎用インバータなどのモータ・コントロールや,ソーラ用パワー・コンディショナ,UPS <田本 貞治>

 

モータ・インバータ,ACサーボ・アンプ,ステッピング・モータ・ドライバなど,モータを回すドライバは知る限りすべてディジタル制御です. <瀬川 毅>

 

AC,DCモータ制御(サーボ制御) <田中 裕一郎>

 

インバータ制御で実現している家電(エアコン,洗濯機,蛍光灯,IH調理器など) <立原 裕司>

 

・すでに席巻しているもの

 :エアコン,洗濯機,鉄道車両等の交流電動機を使用するアプリケーション

・これから伸びるもの

 :DC-DCコンバータまたはAC-DCインバータなどの電源,照明制御 <郡司 高久>

 

モータやエアコン,蛍光灯などのインバータ制御を行うアプリケーション <藤原 泰幸>

 

Q. それはなぜでしょうか

制御が複雑でマイコン制御(ディジタル制御)に適しています.

その結果,パワー回路の半導体に適したスイッチング周波数(数10kHz)のPWMを周辺回路として内蔵しているマイコンが多数量産されています. <田本 貞治>

 

私見ですが

・モータの回転は比較的遅く,マイコン,DSPでも制御が可能なため
・モータに要求の回転負荷は条件によって多様なので,マイコンなどのプログラマブルな要素が必要なため
・さらに状態フィードバックなど現代制御理論を実現するには,マイコンを使うと実現しやすいため

と思います. <瀬川 毅>

 

フィードバック周期がマイコンの処理で対応可能な長さのため <田中 裕一郎>

 

きめ細かな処理を実現するために,インバータ制御(フィードバック処理)にディジタル制御が必須だからです.<立原 裕司>

 

既に席巻しているもの:

さまざまに変化する負荷条件や,要求される回転数/トルクなどをきめ細かく制御するためには,アナログ回路では実現できないため

これから伸びるもの:

スマート・グリッド/スマート・ホームなどで要求される通信機能などを実現するため.部品ばらつきを吸収しながら超高効率を実現でき,また,それらパワエレ制御が可能なプロセッサが廉価になり周辺取り込みによるコスト・ダウンが可能になったため <郡司 高久>

 

インバータ制御により従来よりきめ細かい制御が可能となり,省電力の実現や,柔軟な制御(回転速度調整やエアコンによる温度調整,調光制御など),通信機能などを実現することが可能となった.
また,セット毎に異なる機能もディジタル制御により吸収することができるため,お客様の開発工数短縮にもつながっている. <藤原 泰幸> 

Q. アナログ制御でしか実現できないと思われるパワエレのアプリケーションを教えてください

各種小容量スイッチング電源 <田本 貞治>

 

POL(Point Of Load)など出力電力が比較的小さい用途で,電力変換効率が高く,高速応答が要求されるアプケーションです. <瀬川 毅>

 

 高いスイッチング周波数の電源(コンバータ,インバータ) <田中 裕一郎>

 

Q. それはなぜでしょうか

プロセッサを使用するとコストが見合わない. <田本 貞治>

 

ディジタル制御で高速応答を求めると,どうしても高性能マイコン,つまりCPUクロックの高いマイコンが必要になってきます.しかし,そうした高性能マイコンは自身でも多くの電力を消費します.その結果,高性能マイコンによるディジタル制御は,電力変換効率を下げる事になります.
ディジタル制御には,そうしたトレード・オフと云いますかジレンマが存在します.ですから,半導体技術の進歩による低消費電流の高性能マイコンの登場を待ち遠しく感じています. <瀬川 毅>

 

制御演算時間がSW周波数の1周期内に入らないため <田中 裕一郎>

Q. ディジタル制御のパワエレ開発でもっとも大変だったことは何ですか?

高価で高機能プロセッサを使用すれば容易に電源性能を得ることが可能ですが,安価なプロセッサを使用して電源性能を得るためには制御法の工夫が必要で,試行錯誤を繰り返すことになります.

裏返しになりますが,ディジタル制御のパワエレ開発でのよろこびは,新しい制御アルゴリズムを考え付き,目標の電源性能が得られたときに得られると思います. <田本 貞治>

 

対象をどのように制御すると良いのか,正確に深く理解することです.そうでないと制御の仕様も決まらず,プログラムも書くことができません.
正確に深く,と書くと漠然としていますが,具体的には制御対象の数学モデルを作ることです.言葉を換えると「システム同定」です.
この数学モデルの完成度や精度によって,ディジタル制御によって得られる性能の上限が決まってきます.ここに「システム同定」の重要さを感じますし,非常に難しいことも事実です. <瀬川 毅>

 

制御対象に最適な制御理論の選択と,限られたCPUリソースで制御演算を周期内に実現することです. <田中 裕一郎>

 

性能とコストのバランスを考慮すること.
汎用品には無い新機能(コンパレータとの連動)の仕様検討や実現方法の検討も大変でした. <立原 裕司>

 

マイコンのデバッグにおける手法がそのままでは使えないこと.
マイコンの電源をいかにして確保するか.
ノイズに対しての誤動作対策. <郡司 高久>

 

PFC制御プログラムにおける,パラメータ調整です.
PFC出力のON期間は,PFC出力電圧を一定に保つ役割がありますが,負荷電力と電源入力電圧という二つのパラメータに依存するので,それらを実機ボードにて条件出しするのに苦労しました.

計算によりある程度算出することも可能ですが,基板に依存する寄生容量など不確定要素を含めて精度良く算出するのは非常に困難であるため,この条件出しが必要でした. <藤原 泰幸>

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