高温になるほど金属間化合物の拡散が速くなる
はんだ付けは,すず(Sn)と母材の銅(Cu)とが,数μといった薄い金属間化合物(合金)を作って接合します(図1).
図1 すずと銅の拡散による合金層の形成
この金属間化合物は,SnとCuが相互に拡散して形成されるわけですが,その拡散速度は温度に依存するので,高温になるほど速くなります.そのため材料や部品の耐熱性に問題がない範囲で,できるだけ高温にした方が拡散を促進するのに有利になるのです.
はんだがなじむには液状がよい
なぜ,はんだは溶かして使うのでしょうか.「金属間化合物を作るために高温にした結果,はんだが溶ける温度になった」これも理由の一つですが,金属どうしを拡散させるためには,原子レベルで近づける必要があります.そのために溶けて液状になることは有利なのです.
それと,はんだを付ける部分の全体に,毛細管現象やすき間現象によってはんだをなじませ,確実できれいな接合を作るためにも,液状にする必要があったのです.
はんだは溶けるが,母材は溶けない温度がなぜよいのか
一般的に,はんだ付けを含むろう付けは,母材(例えば銅)よりも融点の低い材料を使って接合します.その接合は,ろう材が溶けて,母材が溶けない温度で行われます.はんだと一緒に母材が溶けてしまうと,母材の形状が保てず溶け落ちてしまいます.これは部品のリードやプリント基板の銅(Cu)パターンが溶け落ちてしまうことを意味するのです.表1に主な金属材料の融点を,表2に主なはんだ材料の特性を示します.
融点が450℃未満の軟ろうを用いるはんだ付けは,はんだこての温度が高くても350℃程度なので,母材の融点を超えることはありません.<大西 修>