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筆者のひとりごと

●自分の人生と技術雑誌

 1960年代に産まれた自分は,社会人になるまでインターネットなるものもなく,小学校から大学までの学生時代の情報の入手は専ら活字に頼るという生活でありました.

 

 子供のころから電子工作にハマっていたのですが,そのときのバイブルは誠文堂新光社の「初歩のラジオ(初ラ)」と,電波新聞社の「ラジオの製作(ラ製)」です.この「初ラとラ製」から得た影響は計り知れないものがありました.自分が作ったラジオで,夕方に「全国子供電話相談室」を聴き,そのまま続けて「小沢昭一的こころ」までを聴くというパターンで,上方向や下方向のさまざまな情報を得て子供心にドキドキしたものです.

 

 まだ背表紙が厚かった頃の初ラの持つエネルギーはすごかったと思います.トランジスタ1石とタッパー・ウェアで作る電子工作.ハトメを打って使う厚紙基板.アナログ・シンセサイザーの長期連載.TTL IC数十個で作るLEDゲーム機.GIやNSのLSIを使った白黒やカラーのTVゲーム(テニスやホッケー).まだマイコンなど当然ない時代,このネタのワクワク感はすごかったです.

 

 マイコン(TK-80)が登場してからは,あの4大マイコン雑誌,アスキー出版「月刊アスキー」,工学社「I/O」,廣済堂「RAM」,電波新聞社「月刊マイコン」を読みあさりました.ネットのない時代,プログラム・コードの供給方法として,ソノシート(レコード板)を使ったり,縦横チェック・サム付きの機械語コード・リストを掲載したり(無我の境地で打ち込む修行),おもしろかったのは「RAM」がやったもので,バイナリ・コードを誌上で紙テープ短冊にドット印刷してあり,それを切り取って長くつなげて,ユーザがLEDとフォトTrを並べたテープ・リーダを自作して読み取らせるというものもありました.もう,本当に工夫のカタマリです.

 

 そうした中で,小中高時代,ひそかにあこがれていた雑誌や書籍を出していたのがCQ出版社でした.トランジスタ技術やインタフェース(黒表紙)は,なんともプロの香りがしていて,これをスラスラ読みこなせるようになりたい,と思っていたわけです.当時のCQの出版物は,前述の4大マイコン雑誌とは袂を分かつ勢いで,ハイ・レベルな内容でしっかりと技術の土台を解説していたように思います.自分にとってとても役にたったのが,1970年代後半から1980年代頭までに発行された写真に示すような雑誌や別冊本です.ここに示したのはほんの一部ですが,いずれも内容はとても濃厚でしっかり説明してくれていました.マイコン・システムの基礎から応用,プログラムの書き方,命令コードなどはもちろん,デジタルとアナログのインタフェース手法まで事細かく解説してくれています.久しぶりに手に取ってみましたが,今でも十分に通用する中身です.逆に今は,ここに書かれているような基礎がないがしろにされているようにも思えるくらいです.


 応用事例としては,例えば8080マイコン・システムのバスにD/A変換器を接続して,X-Yオシロスコープに信号出力してその画面上でテニス・ゲームを実現したりしていました.情熱を感じますよね.

 

 当然,こうした雑誌や書籍の筆者の方々にはあこがれていたわけです.皆さん,すごいなあと.ところがあるきっかけで10年くらい前からときどきCQさんの雑誌などに記事を書かせていただくようになりました.自分は,「なんちゃって技術者+ハッタリ技術者+バカ」なのに,果たしてよいのだろうか,と思いながら.特に,自分の作った電子工作モノを記事にさせていただいたときは,「単なる一品ものの自己満」でクローズするだけのものが,少しでも世の中に貢献できる可能性をいただけので,心底ありがたいと思いました.今回の「MARYシステム」も,何かにお役に立てればそれ以上のことはありません.

 


●今後の雑誌考

 

 基板が雑誌の付録になったときは,衝撃的でした.田舎の本屋でも買えてしまうわけです.電子技術の流通革命?だったのかもしれません.昔も今も,この付録ってのはわくわくさせてくれるものです.小学館の小学○年生や,学研の科学とか.最近では,女性誌がすごいですね.バッグやらポーチやらワンピやら(ほんとに身につけるのかどうかは疑問ありますが).
 しかし,人間(生物)は,「微分」に対する感度が高いわけでありまして,あまり変化しないものに対しては関心が薄くなっていくものです.ゆえに,何か基板を付けておけば,読者は喜ぶ時代は去ったと思います.


 ありとあらゆるメディアは,その瞬間瞬間のベストなわくわく感を提供していかないと絶滅する運命にあると思います.ゆえに,袋とじ的な(まあ,基板もミシン目を開封するので物理的には似てるけど,あっちの袋とじのドキドキ感とはちがうよね),あるいは100円のガチャガチャ的な,とにかく見てみたい,やってみたい,経験してみたい,という気持ちを人に抱かせる何か新しいものを常にクリエイトしていくことが大切なように思います.

 

●CQ出版への期待感

 

 CQ出版という存在は大きいと思います.2ちゃんねるでは,やれ,C級だとか,トラ技が薄いとか,悪口のオンパレードですが,書かれているだけ皆が気にしている証拠です.もしCQ出版がなくなったら,多くの技術者や学生の心のなかにポッカリと大穴が開くことでしょう.自分にとってもショックです.


 だから,頑張ってほしい,応援したいのですよね.電子技術はアジアのほうが台頭してきているように見えていますが,それは製造技術だけです.本質論は,まだまだ欧米や日本での研究開発が力を持っています.そうした研究者や技術者の層を厚くするためにも,小中高大の学生時代から電子技術に興味を持つ若い人材が育ってほしいと思うのです.そこにCQ出版の大きくて重要な役割があると思います.CQ出版の雑誌の購読者層は,(エレキジャックでさえ)多くがオッサンだという話を耳にしたことがありますが,もっと若い層に興味を持ってもらえるような魅力あるメディアも創出していただきたいと思っています.何か協力できることがあれば,喜んでやりたいと思っています.私も含め読者の皆さんからも,たくさんの建設的な意見をCQ出版さんに出していきましょう.

 
<写真> マイコン技術の習得に役に立ったCQ出版の雑誌や別冊本の一部

 

圓山 宗智
Twitter @Processing_Unit

 

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