出力電流が変わると設計がどう変わるか
Vin =9~14V,
Vout =5Vはそのままで,
Iout を3Aから2.5A,2A,1.5A,1Aへと小さくしていった場合を見てみます.
自動生成された回路図を
図5に,それぞれの条件下での使用部品を
表5に示します.また,コストやサイズ,各種特性の変化を
表6と
図6に示します.先の2例と同じように,最適化設定はコスト重視(最適化ダイヤルを3に設定),効率や損失などの特性は
Vin maxにおけるものです.
図5 出力電流を変えたときの推奨回路
(図をクリックすると別ウィンドウで原寸表示します)
図6 出力電流を変えたときの実装面積/コスト/効率/損失の変化
(図をクリックすると別ウィンドウで原寸表示します)
表5 出力電流を変えたときの各コンデンサとインダクタ
項目 |
出力電流 |
単位 |
1A |
1.5A |
2A |
2.5A |
3V |
入力コンデンサ |
Cin |
10 |
10 |
10 |
10 |
10 |
μF |
ESR |
0.003 |
0.003 |
0.003 |
0.003 |
0.003 |
Ω |
サイズ |
23.4 |
23.4 |
23.4 |
23.4 |
23.4 |
mm2 |
コスト |
0.2 |
0.2 |
0.2 |
0.2 |
0.2 |
$ |
備考 |
積セラ |
積セラ |
積セラ |
積セラ |
積セラ |
- |
出力コンデンサ |
Cout |
100 |
44 |
56 |
44 |
56 |
μF |
ESR |
0.1 |
0.001 |
0.04 |
0.001 |
0.03 |
Ω |
サイズ |
58.6 |
46.8 |
53.3 |
46.8 |
53.3 |
mm2 |
コスト |
0.29 |
0.34 |
0.36 |
0.34 |
0.36 |
$ |
備考 |
タンタル |
積セラ |
固体アルミ |
積セラ |
固体アルミ |
- |
インダクタ |
L1 |
33 |
22 |
18 |
22 |
15 |
μH |
ESR |
0.12 |
0.114 |
0.065 |
0.043 |
0.027 |
Ω |
サイズ |
176 |
170 |
151 |
210 |
210 |
mm2 |
コスト |
0.27 |
0.33 |
0.48 |
0.43 |
0.43 |
$ |
備考 |
ドラム |
ドラム |
シールド |
ドラム |
ドラム |
- |
表6 出力電流を変えたときの各特性の変化
項目 |
出力電流 |
単位 |
1A |
1.5A |
2A |
2.5A |
3V |
WEBENCHの設計データ |
実装サイズ |
377 |
360 |
347 |
399 |
406 |
mm2 |
部品コスト |
2.77 |
2.89 |
3.08 |
3.05 |
3.07 |
$ |
効率 |
η |
88 |
85 |
87 |
87 |
87 |
% |
トータル損失 |
Pd |
0.67 |
1.34 |
1.44 |
1.81 |
2.18 |
W |
IC損失 |
Pd IC |
0.23 |
0.37 |
0.53 |
0.74 |
0.98 |
W |
ダイオード損失 |
Pd D1 |
0.3 |
0.68 |
0.61 |
0.76 |
0.92 |
W |
出力電力 |
Pout |
5 |
7.5 |
10 |
12.5 |
15 |
W |
ΔI =0.3Iout としたときのインダクタンス見積もり |
デューティ比 |
DC |
38.2 |
38.3 |
38.5 |
38.6 |
38.7 |
% |
最小インダクタンス |
Lmin |
22.7 |
15.5 |
11.3 |
9 |
7.5 |
μH |
特性の見積もり |
出力リプル電流 |
ΔI |
0.21 |
0.32 |
0.38 |
0.31 |
0.45 |
Ap-p |
出力リプル電圧 |
Vripple |
21 |
0.3 |
15 |
0.3 |
18 |
mVp-p |
LC フィルタ共振周波数 |
f0 |
2.77 |
5.12 |
5.02 |
5.12 |
5.49 |
kHz |
出力電流が小さくなると部品がどう変わるか
Iout の変化によって,
Cout と
L1が変えられています.
表5では省略していますが,D
1は電流容量が小さいものに変えられています. 入力電圧と出力電圧が変わらないので,デューティ比は基本的には変わらず,
Cin はすべて同じになっています.
● インダクタンスは大きくなる
Iout が下がれば,その分リプル電流
ΔI も小さくしなければならないので,
L1は大きくなります.例えば,リプル電流を
ΔI =0.3
Iout に抑えるための最小インダクタンスは,
表6に示すように
Iout =3Aのとき
L1=7.5μH,
Iout =1Aのとき
L1=22.7μHです.
表5を見ると,ほぼ1.5~2.5倍程度の余裕をもった値になっています.
Iout が小さくなるほど定格が低いインダクタを使えるので,インダクタンスが大きくても小型・低コストにできます.サイズでは
Iout =2Aのときの
L1=18μHが最も小型です.コストでは,
Iout =1Aのときの
L1=33μHが最も低コストです.
● 出力コンデンサはインダクタとのバランスで決まる
Iout が小さくなるほど
ΔI も小さくなるので,同じ
Cout でも
Vripple を小さくできます.
Iout が3A,2Aでは
Cout =56μFの固体アルミ電解,また2.5A,1.5Aでは
Cout =44μF(22μFを並列使用)の積層セラミックを選択しています.積層セラミックの方が少し小型,低コストです.この使い分けは,
L1とのバランスが関係しています.
Iout が3A,2Aのときは,
L1を小さめ,
Cout を大きめに選んでいます.
Iout が2.5A,1.5Aのときは,
L1を大きめ,
Cout を小さめに選んで,バランスを取っています.
Iout =1Aのときは,
Cout =100μFと大きくなっています.この
Cout は低コストで
ESR が大きいため,容量を大きく選んでいます.
L1は十分大きく
ΔI も抑えられているので,
Cout =56μF(固体アルミ電解)や
Cout =44μF(積層セラミック)に置き換えることができます.
出力電流が小さくなると小型・低コストになるがインダクタは例外
Iout が小さくなると,電流定格が低い部品を使えるため,サイズもコストも減らせられると考えられます.ただし,
L1も同時に大きくなるので,必ずしも小型・低コストにできるとは限りません.
特に,
Iout が2A,1.5A,1Aの三つについては,
L1がサイズとコストのトレードオフの関係になっています,サイズは
Iout =2Aのときが最小で,
Iout =1Aのときが最大です.また,コストは
Iout =1Aのときが最小で,
Iout =2Aのときが最大です.そのため,サイズのグラフは2Aから1Aに向かってやや増加,コストのグラフは2Aから1Aに向かってやや減少という結果になりました.
出力電流が小さくなると小さな損失が無視できなくなってくる
Iout が小さくなると,スイッチやダイオードの定常損失が小さくなります.それで電源IC損失とダイオード損失はともに減少し,トータル損失も減少します.一方,
Pout も同時に小さくなるので,効率ηはあまり変わりません.
ただし,これは出力電流が最小でも1A程度であり,制御回路などそのほかの損失に比べて出力電力が十分に大きいためです.出力電流がさらに小さくなると,そのほかの損失の比率が相対的に大きくなるため,効率は低下します.
なお,
Iout =1.5Aのときダイオード損失がやや大きいのは,サイズやコストを優先して
VF がやや大きいデバイスを選んでいるためです.
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