出力電圧が変わると設計がどう変わるか
Vin =9~14V,
Vout =3Aはそのままで,
Vout を5Vから3.3V,2.5V,1.8V,1.3Vへと下げてみます.これまでは5V固定出力のLM22676-5.0を使ってきましたが,出力電圧を変えるために,ここでは可変出力のLM22676-ADJを使います.このため,出力電圧設定用抵抗の
Rfb 1と
Rfb 2が追加されます.また,
Vout =5Vのときの推奨設計は,ほかの結果と多少異なっています.
自動生成された回路図を
図3に,それぞれの条件下での使用部品を
表3に示します.また,コストやサイズ,各種特性の変化を
表4と
図4に示します.
先ほどの場合と同じく,いずれの設計結果もコスト重視(最適化ダイヤルを3に設定)の場合のものです.また,効率や損失などの特性は
Vin maxにおけるものです.
図3 出力電圧を変えたときの推奨回路
(図をクリックすると別ウィンドウで原寸表示します)
図4 出力電圧を変えたときの実装面積/コスト/効率/損失の変化
(図をクリックすると別ウィンドウで原寸表示します)
表3 出力電圧を変えたときの各コンデンサとインダクタ
    
        
            | 項目 | 
            出力電圧 | 
            単位 | 
        
        
            | 1.3V | 
            1.8V | 
            2.5V | 
            3.3V | 
            5V | 
        
        
            入力 
            コンデンサ | 
            Cin  | 
            2 | 
            10 | 
            10 | 
            10 | 
            10 | 
            μF | 
        
        
            | ESR  | 
            0.0055 | 
            0.003 | 
            0.003 | 
            0.003 | 
            0.003 | 
            Ω | 
        
        
            | サイズ | 
            18.7 | 
            23.4 | 
            23.4 | 
            23.4 | 
            23.4 | 
            mm2 | 
        
        
            | コスト | 
            0.03 | 
            0.2 | 
            0.2 | 
            0.2 | 
            0.2 | 
            $ | 
        
        
            | 備考 | 
            積セラ | 
            積セラ | 
            積セラ | 
            積セラ | 
            積セラ | 
            - | 
        
        
            出力 
            コンデンサ | 
            Cout  | 
            270 | 
            270 | 
            470 | 
            100 | 
            100 | 
            μF | 
        
        
            | ESR  | 
            0.02 | 
            0.02 | 
            0.02 | 
            0.035 | 
            0.1 | 
            Ω | 
        
        
            | サイズ | 
            77.4 | 
            77.4 | 
            156 | 
            53.3 | 
            58.6 | 
            mm2 | 
        
        
            | コスト | 
            0.35 | 
            0.35 | 
            0.38 | 
            0.36 | 
            0.29 | 
            $ | 
        
        
            | 備考 | 
            固体アルミ | 
            固体アルミ | 
            固体アルミ | 
            固体アルミ | 
            タンタル | 
            - | 
        
        
            | インダクタ | 
            L1 | 
            10 | 
            10 | 
            15 | 
            10 | 
            15 | 
            μH | 
        
        
            | ESR  | 
            0.02 | 
            0.02 | 
            0.027 | 
            0.02 | 
            0.027 | 
            Ω | 
        
        
            | サイズ | 
            210 | 
            210 | 
            210 | 
            210 | 
            210 | 
            mm2 | 
        
        
            | コスト | 
            0.43 | 
            0.43 | 
            0.43 | 
            0.43 | 
            0.43 | 
            $ | 
        
        
            | 備考 | 
            ドラム | 
            ドラム | 
            ドラム | 
            ドラム | 
            ドラム | 
            - | 
        
    
表4 出力電圧を変えたときの各特性の変化
    
        
            | 項目 | 
            入力電圧 | 
            単位 | 
        
        
            | 1.3V | 
            1.8V | 
            2.5V | 
            3.3V | 
            5V | 
        
        
            | WEBENCHの設計データ | 
        
        
            | 実装サイズ | 
            516 | 
            502 | 
            581 | 
            478 | 
            437 | 
            mm2 | 
        
        
            | 部品コスト | 
            3.03 | 
            3.17 | 
            3.2 | 
            3.18 | 
            3.91 | 
            $ | 
        
        
            | 効率 | 
            η | 
            63 | 
            71 | 
            76 | 
            82 | 
            87 | 
            % | 
        
        
            | トータル損失 | 
            Pd  | 
            2.27 | 
            2.26 | 
            2.31 | 
            2.23 | 
            2.18 | 
            W | 
        
        
            | IC損失 | 
            Pd IC | 
            0.62 | 
            0.67 | 
            0.74 | 
            0.81 | 
            0.98 | 
            W | 
        
        
            | ダイオード損失 | 
            Pd D1 | 
            1.44 | 
            1.38 | 
            1.3 | 
            1.21 | 
            0.92 | 
            W | 
        
        
            | 出力電力 | 
            Pout  | 
            4.5 | 
            5.4 | 
            7.5 | 
            9.9 | 
            15 | 
            W | 
        
        
            | ΔI =0.3Iout としたときのインダクタンス見積もり | 
        
        
            | デューティ比 | 
            DC  | 
            13 | 
            16.5 | 
            21.4 | 
            26.8 | 
            38.7 | 
            % | 
        
        
            | 最小インダクタンス | 
            Lmin  | 
            3.6 | 
            4.4 | 
            5.3 | 
            6.2 | 
            7.5 | 
            μH | 
        
        
            | 特性の見積もり | 
        
        
            | 出力リプル電流 | 
            ΔI  | 
            0.32 | 
            0.39 | 
            0.32 | 
            0.56 | 
            0.45 | 
            Ap-p | 
        
        
            | 出力リプル電圧 | 
            Vripple  | 
            6 | 
            8 | 
            6 | 
            19 | 
            45 | 
            mVp-p | 
        
        
            | LC フィルタ共振周波数 | 
            f0 | 
            3.06 | 
            3.06 | 
            1.9 | 
            5.04 | 
            4.11 | 
            kHz | 
        
    
出力電圧が低くなると部品がどう変わるか
Vout の変化によって,
Cin ,
Cout ,
L1が変わります.また,
表3では省略していますが,
Vout が低くなるとスイッチのOFF時間が長くなり,平均ダイオード電流が増えるため,必要に応じてD
1も電流容量が大きいものに変えられています.
 ● インダクタンスを小さくできる
Vout が低くなると,インダクタ電圧が下がって
dI /
dt が小さくなるので, 
L1を小さくできます.
表4に示すように,リプル電流
ΔI =0.3
Iout に抑えるための最小インダクタンスは,
Vout が5Vのとき7.5μH,1.3Vのとき3.6μHです.
表3を見ると,
Vout が5V,2.5Vのときは
L1=15μH,また3.3V,1.8V,1.3Vのときは
L1=10μHで,いずれも余裕をもった値になっています.これらのインダクタは同じシリーズの製品で,サイズ,コストも同じです.
 ● リプル電圧低減のため出力コンデンサを大きくする必要がある
Vout が下がれば,その分リプル電圧
Vripple も小さくしなければなりません.例えば50mV
p-pの
Vripple は,
Vout =5Vに対してはわずか±0.5%ですが,
Vout =1.3Vに対しては約±2%になります.そこで,
Vout が低くなるにしたがって
Cout を大きめに,
ESR を小さめに選択しています.
Vout が2.5V以下では
Cout は270~470μFと大きくなっていて,
Vripple は6~8mV
p-pに抑えられています.
表4を見ると,その分
LC フィルタの
f0も低くなっています.
Vout =5Vでは
Cout =100μFで,LM22676-5.0の推奨設計(
表1の
Vin =9~14Vのときの値)よりかなり大きくなっています.これは
Cout が低コストで
ESR が大きいため,容量を大きく選んでいるためです.固体アルミ電解なら
Cout =56μFに変えることができます.
 ● 入力コンデンサは小さくできる
Vin は変わりませんが,
Vout が下がるほどスイッチのON時間が短くなるため,
Cin を小さくできます.
表3を見ると,
Vout =1.3Vのときだけ
Cin =2μFと小さくなっていて,それ以外は
Cin =10μFとなっています.
出力コンデンサの大容量化がサイズをわずかにアップさせた
Vout が低くなるにしたがって,
Vripple を小さく抑えるために
Cout が大きくなります.その分,サイズもやや大きめになる傾向です.しかし,同時に
Cout の耐圧を下げられるので,コスト的にはそれほど大きな変動はありません.
トータル損失が変わらなくても出力電力の低下によって効率が悪化
Vout が低くなってもトータル損失
Pd はあまり変わりません.ところが,出力電力
Pout =
Voutout I が小さくなるため,効率ηは急激に低下してしまいます.効率の値を評価する場合は,この点に注意すべきです.
Vout が低くなるとデューティ比
DC が小さくなるため,ダイオード損失が増え,スイッチの定常損失は減っていきます.入力電圧やスイッチング周波数が変わらなければ,スイッチング損失など電源ICのそのほかの損失は変わらないので,LM22676ではダイオード損失の増加と電源IC損失の減少がほぼ相殺されます.
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