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補足記事1:付録DC-DCコンバータ基板のノイズ対策法

10月号別冊付録には,写真1のDC-DCコンバータ基板が付録していました.この基板の動作を実験で確認しながら解説します.

写真1 本誌10月別冊付録のDC-DCコンバータ基板

スイッチング・レギュレータは高効率だがノイズが多い

スイッチング・レギュレータの特徴を一言で言えば,効率が高く発熱が少ないけれどノイズが多い,です.デメリットのノイズは対策が必要な場合もあります.

スイッチング・レギュレータを設計/製作するとき,高効率の特長を活かして低ノイズとするためには,ノイズをできるだけ発生させないことと,発生したノイズをフィルタなどにより取り除くことが必要になります.

スイッチング・レギュレータの出力ノイズには,図1に示すように,リプル・ノイズとスパイク・ノイズがあります.これらは発生原因が異なり,対策法も異なります.

図1 スイッチング・レギュレータの出力ノイズ
リプル・ノイズとスパイク・ノイズを分けて考える
(クリックすると大きいサイズの図が開きます)

リプル・ノイズの対策

リプル・ノイズが小さくならない原因は,出力平滑コンデンサが持つ抵抗分ESR (等価直列抵抗)です.しかし,リプル・ノイズを小さくしようとして超低ESR の出力平滑コンデンサを使用すると,10月号別冊付録で触れたように,負帰還安定度に影響して発振することがあります.出力平滑コンデンサに超低ESR コンデンサを使う場合は,位相補償を再設計することが必要になります.

負帰還安定度に影響しないリプル・ノイズ低減の手法としては,外付けのLC フィルタがあります.

スパイク・ノイズの対策

スパイク・ノイズは急峻な立ち上がり/立ち下がりを示し,スパイク・ノイズに含まれる周波数成分はラジオ放送やTV放送に影響するような非常に高い高周波にまで及びます.周波数が高いと,電磁波として空中に出てしまいます.その電磁波が直接負荷に飛びつくため,フィルタを外付けしても,ある程度以上は低減できません.

スパイク・ノイズはプリント基板の設計に原因があることが多いようです.スパイク・ノイズを低減するためには,発生原因を知り,それに応じたパターン設計が必要です.付録DC-DCコンバータ基板はこの点優秀です.

LC フィルタを加えればリプル・ノイズを低減できる

スイッチング・レギュレータでアナログ回路を動作させるには,電源ノイズを小さくさせることが必要です.特に,DC-DCコンバータ基板のような高い周波数(300kHz)の電源ノイズに対しては,アナログ回路で使用するOPアンプ等のIC自体に電源変動除去比(PSRR と呼ぶ)がほとんどなく,電源ノイズが出力に漏れ出します.

外付けのLC フィルタでどの程度リプル・ノイズが低減するか,実験で確認してみましょう.

CIN :220μF 25Vを追加した10月号別冊付録DC-DCコンバータ基板に図2LC フィルタを追加したときの波形が写真2です.LC フィルタ前の51.2mVp-pのリプル電圧が,LC フィルタを通すと1.36mVp-pと約1/38(-32dB)に減衰していることがわかります.また,スパイク・ノイズもありません.

図2 LC フィルタによるリプル・ノイズ低減の実験回路
出力にLC フィルタを追加することでリプル・ノイズは大幅に低減する
(クリックすると大きいサイズの図が開きます)

写真2 LC フィルタ追加による出力リプルの変化
(クリックすると大きいサイズの写真が開きます)

この程度のリプル・ノイズであれば,ほとんどのアナログ回路に使用可能でしょう.微少信号を扱う高ゲインのアナログ回路は,スイッチング・レギュレータ部分から離して配置すれば,パターン配線のリード・インダクタンスと随所に挿入されたパスコン(デカップリング・コンデンサ)で,多段のLC フィルタが挿入されることになり,電源ノイズはさらに減衰するはずです.微少信号回路の電源ノイズを観測して,ノイズが大きいようなら,抵抗とコンデンサを使用した簡単なRC フィルタを電源部分に入れることを勧めます.

電源ICを負荷にしたときの動作を確認

何種類もの電源電圧が必要な回路は多く,最近では,1個のICでもI/O電圧の3.3Vとコア電圧の1.8Vなど2種類以上の電源電圧が必要なことも少なくありません.その場合,電源回路の後ろにさらに電源回路を接続することになります.このときの動作を確認してみましょう.

図3のように,負荷として2種類の電源ICを接続して実験しました.

(a) 実験回路

(b) DC-DCコンバータ負荷

(c) LDO負荷
図3 電源ICを負荷にしたときの動作を確認
(クリックすると大きいサイズの図が開きます)


写真3は,スイッチング周波数1MHzの超小型DC-DCコンバータIC BD9130EFJを使用して1.8V 1Aを出力したときの入出力リプル電圧波形です.出力に入れたコンデンサは22μF 6Vのセラミック・コンデンサですが,リプルを小さくするためには,もう少し大きくした方が良さそうです.

写真3 DC-DCコンバータ負荷時の出力波形
上はVout 2(追加したDC-DCコンバータの出力)の波形,下はVout 1(付録DC-DCコンバータ基板の出力)の波形
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写真4は,超小型LDO(高効率)レギュレータIC BD00KA5WFを使用して5V 0.2Aを出力したときの入出力リプル電圧波形です.LDOはスイッチング動作ではないのでノイズが少なく,入出力電圧差を小さくすることで高い効率も得られます.LDOレギュレータICの出力電圧が5Vなので,DC-DCコンバータ基板はそれより少し高い電圧を出力する必要があります.DC-DCコンバータ基板内のR1の代わりに入れたVR により,DC-DCコンバータ基板の出力電圧を5.2Vに調整しました.LDOの出力に入れたコンデンサは1μF 50Vのフィルム・コンデンサです.面白いのはリプル波形で,入出力とも正弦波になっています.

写真4 LDO負荷時の出力波形
上はVout 2(追加したLDOの出力)の波形,下はVout 1(付録DC-DCコンバータ基板の出力)の波形
(クリックすると大きいサイズの写真が開きます)

◆参考文献◆
(1) BD9778F/HFP,BD9001F,BD9781HFPテクニカル・ノート,2006年4月,ローム㈱
(2) BD9130EFJテクニカル・ノート,2008年4月,ローム㈱
(3) BD□□KA5,BD00KA5Wシリーズテクニカル・ノート,2007年9月,ローム㈱

<馬場 清太郎>

※本誌2008年12月号では,スパイク・ノイズの対策法,出力電流の増加法などを含めた解説記事を掲載します.

2008/10/23 公開

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