編集部
ワイヤレスジャパン2024× ワイヤレス・テクノロジ・パーク2024
5 月29 日~31 日,日本最大級の無線通信の専門展示会「ワイヤレス ジャパン× ワイヤレス・テクノロジー・パーク」が東京ビッグサイトで 開催された.来場者数はのべ25,566 名.ワイヤレス・ソリューション の展示と最新の研究開発を一堂に体験できる展示会だった.
● Wi-SUN向け無線モジュールとプロトコル・スタック (SKYLEY NETWORKS)
ND7351は1つでWi-SUN IoTルートとFANを切り替えて使える.Wi-SUN EHAN/Route-IoT(全ロール対応)とWi-SUNFAN(Border Router, Router対応)でTELEC認証などを取得済.8月から評価キットを提供開始予定.
S K S T A C K I P f o r E H A N 2 . 0は,W i – S U N B ルート・Enhanced HAN・IoTルートに対応したプロトコル・スタックで,スリープ・デバイス向け省電力制御を内蔵.使用するプロトコルや無線機の機能に合わせた3種類を準備.リレー・デバイスの多段中継やTCP 通信のサポートなどの独自仕様も付加している.
● マイコンを統合したSub-GHz~2.4GHz帯RF用SoC (STマイクロエレクトロニクス)
Sub-GHz 帯向けのLoRaWAN/Sigfox/FSK 変調に対応し各国認証済みの超小型SiP モジュール STM 32 WL 5 MOC は,TCXO/RTC/ アンテナ・マッチング回路/ フィルタを内蔵し,外付部品を大幅に削減できる.サイズは10×10mm.Arm Cortex-M4とM0+の2コアを内蔵し,2コアの分業で低消費電力と高速動作を実現できる.
STM32WBシリーズはBluetooth5.4,Zigbee3.0,Threadに加えMatter にも対応.デュアル・コア・アーキテクチャでArmCortex-M 0 が無線通信の管理を,Cortex-M 4 がアプリケーションの処理を行う.OTA ファームウェア更新やセキュリティ機能も提供している.Flash メモリ/RAM サイズによって幅広いバリエーションがある.
●Wi-SUN FAN 1.1 LFN+BLE無線SoCと無線モジュール (シリコン・ラボラトリーズ)
EFR32FG28はSub-GHz帯とBluetooth Low Energyの両方に対応した無線S o C .S u b – G H z 帯では,( G )F S K /OQPSK/DSSS/(G)MSK/OOKに対応し送信出力は+20dBmの大出力である.Bluetooth Low Energyの内蔵により,セキュリティ/ 照明/ ビル・オートメーションはもちろん,使用料金がからむ計量にも対応できる.CPUはArm Cortex-M33でTrustZoneと高度なセキュリティ機能のSecure Vault を内蔵.Wi-SUNFAN 1.1認証済みのスタックを提供できる.
長野日本無線はEFR 32 FG 25 を採用した国内TELEC 認証済みの920MHz帯無線モジュールを発表.Wi-SUN FAN 1.1準拠のメッシュ・ネットワークを構成できる.送信出力は国内規格上限の2 0 m W で外部アンテナが使用可能.外形寸法は2 3 × 2 5 ×2.8mmである.
● 無線LANのトラブルを解決するテスタ(NetAlly)
無線L A N のA P をどこに設置すればよいのか? 必要台数は?またAP を設置したが遅い・つながらないなどのトラブルを効率よく解決するツール.機種によって機能に違いがあるが,SSID / AP /端末の検出,AP/端末の位置検知,トポロジ・マップ作成,周波数バンドのスペクトラム表示,パフォーマンス・テスト/ パケット・キャプチャなどのほかに,ヒートマップも作成できる.メタルや光ファイバ対応の機種もラインアップしている.
● 携帯の電波が届かないトンネルでも通話ができる(MI)
AirREAL-sXGPはプライベートLTE のアクセス・ポイント.携帯キャリアの電波が届かないトンネル・洞道でもスマートホンに専用のSIM を装着し,本機を設置するだけでLTE音声通話・データ通信が可能になる.1 台での通信距離は約800 mで,もちろん通話料は0 円で免許も不要.間にインターネットを介せば2 拠点間でも通信や通話が可能になり,1 拠点で複数設置すればホッピングで通信距離を拡大できる.
● 長距離伝送用プロポ送受信機・テレメトリ無線機(TKKワークス)
マルチコプタやヘリコプタなど,長距離通信が必要で堅牢な筐体のリモコンを提供している.途切れにくい169 M H z 帯のプロポ送受信機や,無人移動体画像用周波数を使用した2 . 4 GHz のテレメトリ無線機,5 . 7 GHz 画像伝送装置のほか,フライト・コントローラやモーション・センサなどを発売.マルチコプタやヘリコプタ本体も販売しているので,強みを発揮した製品である.
● IEEE802.11ah対応無線LANコンバータ(コンテック)
920 M H z 帯で障害物があっても1 km 程度までの無線伝送ができ,従来のWi-Fiとの電波干渉を回避できる.実効速度は約1Mbps(理論的な通信速度は150 kbps~13.5Mbps)で画像伝送も可能.1 対N 接続も可能で10BASE-T,100BASETXのEthern e t が接続できる.コンパクト・タイプと長距離伝送タイプの2機種をラインアップ.
● 5G FR1およびFR2の評価を1台で実現(ローデシュワルツ)
R & S CMX 500 5 G ワンボックス・シグナリング・テスタは,5 G モバイル・デバイスのアプリケーション・テスト用の完全統合型ソリューション.I P v 4 / I P v 6 テスト環境に最適化されているため,最大限の再現性と安定性を得られる.ワンボックスのためセットアップの簡素化/ データレート20 G b p s 以上に対応し,D N S /HTTP/FTPなどのアプリケーション・サーバ機能がすぐ利用でき,ping/IPチューニング/IP解析/IPロギング/DNSモニタ/QoSなどの測定ツールも充実している.
● 920MHz帯の新しいネットワークLPWA無線 (ZETAアライアンス)
920 MHz 帯のLPWA 無線でマルチホップ対応かつ基地局との上り/下り通信をサポートしている.クラウド・システムとの親和性もよく計測制御に最適な通信方式.無線モジュールはI2 C/UARTで制御でき,最近取りざたされているセキュリティ機能にも対応,FOTAに対応している製品もある.温湿度・照度・CO2 / アナログ・メータ値の読み取り/機器の故障予知検知用の収音センサ/4-20mAまたはModbusなどのデータ転送ユニットに採用されている.またセンサ・ユニット製品や評価用ボードも多数発売されている.
● Wi-Fi Hallow RFモジュール(メガチップス)
MRF61_AはIEEE802.11ah(Wi-Fi Hallow)準拠のRFモジュール.アクセス・ポイントとエンド・ポイントの両方に対応し,どちらの製品にも利用できる.RF部分に特化したシンプルな仕様で,小型化やコスト・メリットがある.もちろん国内電波技適取得済(FCC対応版もあり).3.3V単一電源動作で表面実装.
● 非同期パルス符号を使用した多重通信方式APCMA (東京理科大学&大阪大学)
脳の動作にヒントを得て開発した新しい無線通信技術で,10,000台以上の端末と衝突なく低コストでLPWA通信できる.神経細胞パルス通信の特定パターンが特定の符号化された情報と関連していて,パルス・パターンは疎らな傾向があることを応用している.実機を用いた実験では920MHz帯で1,000台の送信機を用いたYRP(横須賀リサーチパーク)での予備実験では,見通し1 km の通信距離を達成している.現在,IoT による監視/ モニタリング/ へき地などへの活用に興味ある企業とのコラボを募集中.
● マグネチック・ループ・アンテナによるビーム・フォーミング (徳山高等専門学校)
徳山高等専門学校 クリプトクロム4では,ノイズに強い通信設備を実現する方法としてアンテナに着目.電界に応答しないマグネチック・ループ・アンテナ( M L A )を用いることで近距離のノイズによる影響を低減し,MLA の共振特性をフィルタとして活用した.MLA を4個使用してシミュレーション値9.6dBi,実測8.2dBiのゲインを得るとともにビーム・フォーミングを可能とし,アンテナ近傍での電界ノイズに対してダイポール・アンテナ比6 . 9 dB の成果を得た.高専ワイヤレステック・コンテスト 2023のワイヤレス基礎技術部門で最優秀賞を受賞.
ライター:武田洋一