編集部
組み込み ボードと ミニPCの いいとこどり!高性能シングルボードコンピュータ『ROCK5 Model B』
Okdo ROCK5 Model Bは,Rockchip RK3588を搭載したOkdoとRadxa社が製造するシングルボードコンピュータです( 写真1 ).
搭載するR K 3588 は,C o r t e x – A 76 とCor tex – A 55 をそれぞれ4 コアずつもつ8 コアARM プロセッサのSoCです.ボード上には,高解像度のHDMI入出力ポートやUSBポート,2.5GbEのLANポート,GPIOピンヘッダを備え,ストレージにはSD カードの他に,eMMC やNVMeをストレージとして利用できます.
組み込み向けに多種多様な装置に接続することも,高性能・高信頼性が要求される用途にも利用できる,いわば,組み込みボードとミニPCのいいとこどりをしているのが,ROCK5 Model Bです.
ROCK5 Model Bの目玉機能
世の中には,ラズベリーパイや,その互換コンピュータボードなど,数多くのシングルボードコンピュータ(以降SBC)が流通しています.SBCの特徴は,フル機能のLinuxの上でパソコン同様のソフトウェア開発ができる利便性と,GPIOなど低レベルのI/O 接続が容易で高い拡張性を持つことにあります.
その中でもROCK5 Model B(以降ROCK5B)の目玉機能は次の4つです.
(1) 高性能なARM SoCのRK3588を搭載.このSoCは8コアのA R M コアに加えて,G P U としてA r m M a l i G610MC4を内蔵.
(2) PCIe Gen 3 × 4 をサポートするM. 2 ソケットを搭載.NVMe SSDを使った高速・高信頼なシステムを構築できる.
(3) 2系統の8K@60HzのHDMI出力,4K@60HzのHDMI入力,MIPI-CSI/DSIといった豊富な画像入出力ポートを搭載.
(4) 回路図や3 D モデルなどの技術情報が公開されていて,装置への組み込みが容易.利用可能な公式およびサードパーティのOSも豊富.
高性能・低消費電力のRK3588のパワー
ROCK5Bが搭載するRK3588は,4基のCortex A76と4基のCortex A55の8コアで構成されるARM SoCです.A 76とA 55の2 種類のコアで構成され低消費電力ながら高い計算処理性能を持ちます.また,GPUとしてArm Mali G610MC4を内蔵しています.
公式で配布されているLinuxデスクトップを操作し,Webブラウザを起動してYouTubeで動画再生をするといった操作でもストレスを感じることはありませんでした.
図1はGeekBench6による性能評価のスコアです.ミニPCに搭載されているIntel Processor N100と比較して遜色ない性能であることが分かります.
PCと比べると低消費電力のROCK5Bですが,ベンチマークのような負荷をかけると,裸の状態のプロセッサでは発熱が心配になります.写真2 のようにヒートシンクを乗せることで,アイドル時の温度が42度前後,GeekBench6のマルチコアを使ったベンチマーク実行時で72 度位に上昇する程度でした(室温は約22 度).なお,消費電力を電源供給元のUSB Type-Cポートでモニタしてみると,アイドル時は3Wから4W程度で,ベンチマーク実行時には11W程度でした.
SSDを利用した高速・高信頼システムの構築
多くのSBCではSDカードがメインストレージとして選択されることが一般的です.SDカードは手軽に使える反面,信頼性や転送速度が問題になることがあります.ROCK 5 Bでは専用ソケットにeMMCを,M.2ソケットにNVMe SSDを搭載して,高信頼で高い読み書き性能のシステムを構築できます.
図2は,SDカードとNVMe SSDの読み書き速度を比較した結果です.シーケンシャルな読み書きでは,それぞれ25倍と39倍の性能向上,また,512KB単位のランダム書き込みでは64倍もの性能向上という結果が得られました.
利用しがいのある高解像度HDMI出力とHDMI入力ポート
ROCK 5Bは8 K@ 60 HzのHDMI出力を2ポート,4 K@60HzのHDMI入力を1ポート搭載しています.HDMI出力ポートはフルサイズのコネクタなので手軽にディスプレイに接続して利用できます.高解像度の画面出力が必要なアミューズメント装置などでの利用にもいいかもしれません.一方で,HDMI入力ポートはMicroHDMIコネクタなのでフルサイズのコネクタを接続する場合には変換アダプタや変換ケーブルが必要になります.
HDMI入力はLinuxでは,/dev/video0からアクセスできます.試しにノートパソコンのHDMI出力をROCK 5Bに接続して,Gstreamerを使ってLinuxデスクトップ上にリアルタイムでパソコンのディスプレイを表示したのが写真3です.調整不足で色がややおかしいですが,他の機器のHDMI出力をリアルタイムで取り込めるので画像編集装置アプリの実装などに利用できそうです.
Radxaによる技術情報の公開
回路図や3Dモデルなど,ROCK5Bを製品に組み込んで利用する場合に必要な情報は,RadxaのWebサイト(https://docs.radxa.com/en/rock5)で公開されています.また,公式の標準実行環境としてDebian(Bullseye)が提供されている他,Android 12,Ubuntu Serverが提供されています.コミュニティの活動には,Arch Linuxなど様々なLinuxに加えて,物体認識のY OL O のセットアップ方法の情報共有や,ARM用のWindows 11を移植するプロジェクトもあります.
その他,Web サイトには,インストール手順や実績あるWiFiカード,USB PDアダプタなどの情報が整理されており,フォーラム(https://forum.radxa.com/)ではユーザ同士のQ&Aが集まっています.DiscordにもRadxaのコミュニティがあり,ROCK5Bユーザ向けのチャネルでは利用事例やトラブルシュートの方法などがやりとりされています.
ROCK5Bは安心して使えるSBC
ROCK5Bは高性能で高信頼なSBCです.8K@60HzのHDMI出力を活用したディジタルサイネージや,4K@60HzのHDMI入力を活用した動画像処理システムの構築などの利用ができます.高性能プロセッサのパワーを活用してAIシステムを実装するのもよいでしょう.また,プロセッサパワーとGPU処理能力は,オフィスでの事務作業に使うコンピュータとしてストレスがないレベルです.ミーティングスペース
の共用PCなどに利用するのもいいかもしれません.
ROCK5Bは国内ではRSコンポーネンツ(株)から購入できます.RSオンラインでは,4GB/8GB/16GBのバリエーションから選んで購入できるほか,50 個単位での購入にも対応しています.手軽に購入してちょっと試してみることができ,また,産業用にまとまった数が欲しいケースでも安心して採用できるといえるでしょう.