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アナログ・デバイセズの16ビットADC AD4855
250kSPSで8チャンネル同時サンプリング,かつ各チャネルのダイナミックレンジを動的に自動調整可能

アナログ・デバイセズでは,タイミング条件の厳しい複数の信号を高精度に監視,計測できる多チャネル同時サンプリングの高精度ADCを製品化しています.その中でAD4855は,各入力にバッファを内蔵し,かつバッファのゲインをチャネルごとに動的に自動調整するSHDR(シームレス・ハイ・ダイナミック・レンジ)を内蔵した高機能のADCです.面倒な外付け回路なしにフル機能の16ビット・データ・アクイジション・システムを実現できる,使いやすい製品です.
さらに,高速,高精度の性能を十分に生かせる柔軟な入出力インターフェースを超小型の64ボールBGAパッケージに収め,きわめてチャネル密度が高いことも特徴です.自動試験装置,各種の計測器および制御システム,航空電子機器などの小型,高密度化に最適です.
●同時サンプリング可能で,使いやすい多チャネルADC
複数の電気信号をディジタル化してシステムに取り込む場合,アナログ・マルチプレクサで次々に信号を切替えることによって,1個のA/Dコンバータで多チャネルのデータを変換する方法があります.ただし,この方法では各チャネルの変換開始タイミングがずれるので,信号間の時間差や位相差が問題になる用途や,各信号のタイミングを高精度に取り込みたい用途には使えません.そこで使われるのが,多チャネルを同時にサンプリングして変換するADCです.
アナログ・デバイセズのAD4855は,内蔵する8個の16ビットADCを同期動作させることによって,8チャネルの同時サンプリングを実現しています.サンプリング速度は最大250kSPSで,変換データはCMOS SPI出力またはシリアルLVDS出力で出力します.シリアルLVDSは8チャネル分の変換データを超高速の1チャネルに多重化して出力し,CMOS SPIの場合は最大8チャネルの並列動作が可能です(図1).
8チャネルA/Dコンバータ製品の中で,AD4855の大きな特徴は,多様な入力信号を容易に扱える使いやすさです.
まず,8チャネルのそれぞれに広帯域,高入力インピーダンスの差動入力バッファを内蔵しています.それによって,信号源の特性の影響を受けにくく,アンチエリアス・フィルタなどの前置回路の設計も容易にできます.差動入力,真のバイポーラ入力,ユニポーラ入力などに,外付け回路なしで対応できます.
バッファ回路用の電源は,正電源が7.5~48V,負電源が-40.75~0Vと幅広く,入力信号に応じて柔軟に選択可能です.広い同相入力範囲と高いCMRRをもち,さらにレールtoレールの入力オーバードライブ耐性をもちます.
各チャネルの信号レンジを16種類のプリセット値から簡単に選択できます(ソフトスパン).これによって,異なる種類の入力信号が混在していても,それぞれの信号を最適な条件で変換することができます.また,ディジタルによるゲイン補正機能,オフセット補正機能を内蔵しており,高精度の特性を簡単に引き出すことができます.
電源としては,他に5Vのディジタル電源と,ディジタル側のインターフェースに合わせて0.9~5.25Vの範囲を使用できるIO電源などがあります.いずれの電源入力端子もデカップリング・コンデンサを内蔵しており,基板設計や実装が容易です.
この高精度,高機能の8チャネルA/Dコンバータは,7×7mmと小型の64ボールBGAパッケージに封入されています(図2).
250kSPS時にチャンネルあたり 27mWと消費電力も低く抑えられており,高いチャネル密度でも熱的な問題は起きにくく作られています.64ボールはアナログ系とディジタル系を電源とGNDによって分離するように配置されており,容易に高特性が得られます(図3).これらの特徴から,多数の信号を扱うATE(Automated Test Equipment:半導体試験装置)などの高度な計測システムを,きわめてコンパクトな基板面積で実現できます.
図1 高精度,高機能,高チャネル密度を実現したAD4855
図2 きわめてコンパクトなBGAパッケージ
図3 合理的な64ボールの配置
●動的にダイナミックレンジを自動調整するSHDR
AD4855のきわめて便利な新機能として,各チャネルの差動入力信号に基づいてゲインを設定し,入力信号に対する入力換算ノイズの影響を最小化するSHDR(シームレス・ハイ・ダイナミック・レンジ)があります.これは,AD4855を含むAD485xファミリに初めて搭載された新機能です.
SHDRを有効にしていると,1サンプルごとに動的にゲインを最適化して変換を行うので,信号レベルの変化によらず常に高精度の変換ができます.変換結果は,あらかじめ設定されたソフトスパンのレンジに合わせて出力されるので,ユーザが変換データに操作を加える必要はありません.
SHDRはチャネルごとに無効にできます.SHDRを無効にすれば,あらかじめ設定されたソフトスパンのレンジのままで変換が行われます.
このSHDR機能によって,ATEなどダイナミックレンジが広く電圧が高い信号を扱う用途でも,過大信号による飽和を防ぎつつ,小レベルの信号を高精度に変換することが簡単に実現できるようになりました.
●評価キットと設計モデル
アナログ・デバイセズでは,AD4855の高速版(1MSPS,16ビット)にあたるAD4857の評価ボードを提供しています.また,シミュレーションモデルとしてAD4855の高速・高分解能版(1MSPS,20ビット)にあたるAD4858のLTSpiceモデル,IBISモデルを提供しており,開発,評価に活用できます.
電子部品のECサイト・ MouserではAD4855のチップやAD4858の評価ボードを販売しています.
●AD4855チップ
(メーカ品番AD4855BBCZ)
https://www.mouser.jp/ProductDetail/Analog-Devices/AD4855BBCZ?qs=olJun0bQHM%2Fsp2IJAzjflw%3D%3D
●AD4858評価ボード
(メーカ品番EVAL-AD4858FMCZ)
https://www.mouser.jp/ProductDetail/Analog-Devices/EVAL-AD4858FMCZ?qs=ST9lo4GX8V16o%2FkjumSm8w%3D%3D
また,詳しくは,アナログ・デバイセズのAD4855の製品ページをご参照ください.
マウザー・エレクトロニクス
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