編集部
受賞者を発表!イベントベースビジョンカメラ SilkyEvCam®活用アイデア・アルゴリズムコンテスト2024

光の明暗変化のみを捉えるというユニークな特徴を持つ「イベントベースビジョンカメラ」(以下、イベントカメラ).この最新技術の活用方法を募るコンテストには、従来のフレームカメラとは異なる「イベントベース」という新しい概念や,画像・映像データ処理の可能性に挑戦する場として,多くのご応募をいただきました.
学生と研究者を対象とした本コンテストでは,参加者にイベントカメラを貸し出し, 実際に体験していただきました.その体験を通じて,身近な課題や社会問題の解決策に取り組むきっかけになればと考え,活用アイデアとアルゴリズムの両面で提案を募集しました.その結果,イベントベースの世界や本カメラに初めて触れる方から,既に研究に取り入れている方まで,幅広い参加社から寄せられた提案は大変興味深いものでした.
●本コンテストの概要
(https://centuryarks.com/newsrelease/6381/)
●イベントカメラとは
(https://centuryarks.com/about-evcam/)
4 つの審査基準を基に, 弊社(株)センチュリーアークスとイベント
ベースのパイオニアであるフランスのProphesee 社, それぞれの
経営にも携わるイベントベース技術の専門家が応募作品の審査を行
いました.
審査基準:
①イベントカメラの特長を活かしたアイデア
②先進性と独自性
③社会のニーズと問題意識
④社会実装の実現性
最優秀賞
・受賞者(チーム)
長岡工業高等専門学校 やのやのわくわく
(五十嵐幸多さん,小林由佳さん,小林浚也さん)
・活用アイデアのタイトル
「イベントベースドカメラによる可視光通信「えぼっく(EBOCC)」
・評価内容
LEDとフォトセンサーを用いた可視光交信は,かつて,弊社でも製品化し,ビル間通信や水中での通信実験を行いました.現在,IEEE*から通信規格がリリースされていますが,イメージセンサーを用いる規格は策定作業進行中です.そのような中,イベントベース光カメラ通信(EBOCC)や可視光通信(VLC)は,イベントカメラを活用した比較的新しく素晴らしい応用分野であり,センシング技術の特徴をよく表しています.これまでも同様なことは行われていましたが,この作品はそのコンセプトを見事に具体化しています.さまざまな符号化や変調方式が実験的に試されており,一部ではエラー検出や補正も含まれています.さらに,具体的な応用例についても議論されており,その点が高く評価されます.通信に必要なピクセルは最小1で済むという特徴を活かし,「1対Nの通信」の可能性に言及していれば完璧な提案となったでしょう.
イベントカメラ光通信は,単にその存在を示す「灯台」のような役割にとどまらず,光通信にIDを埋め込むことも可能です.例えば,複数の灯台と同時に通信することを可能にすることで自己位置を算出することもできるため,AGV(自動搬送車)に搭載されれば暗闇でも自己位置を把握し,移動させることができるようになります.
受賞のご感想
動いている物体のみ写す特殊なカメラを用いた開発はとても新鮮な体験でした.まだ世に広まっていないデバイスにも関わらず,SDKがしっかり用意されていることにも驚きました.活用事例が少ない中でアイデアを考えることや,少ない情報で機能を実装することには苦労しましたが,確実に自分たちの実力は向上しました.今後は,ロボット分野を通してこのカメラの社会実装に貢献していきたいと思います.
優秀賞
・受賞者(チーム)
宮城教育大学 Science Support SPINOZA
(内山哲治教授,佐藤夏菜恵さん,松村美結さん)
・活用アイデアのタイトル
「物理の本質を捉える実験をいかに簡便かつ安価に行うか」
・評価内容
実に独創的なイベントカメラの使い方です!発表された実験は,センサーの応用技術的な観点から見るとあまり深いものではありません.しかし,この提案は学生に物理現象を簡単に視覚化し,物理法則を検証するためにデータ分析への意欲を喚起するツールを提供することになるでしょう.将来,物理学現象を教える立場になる学生にとって,この実験は非常に有用です.イベントカメラの特徴を活かし,物理現象の可視化が容易にできることを示しています.短時間で物理現象を理解させることができる教育事例をさらに増やしてほしいと考えます.イベントカメラの持つ高い時間分解能やダイナミックレンジの広さを活用し,照明関連の工夫を含めて複雑な物理現象の可視化を進められると期待しています.例えば,水の流れに棹を指すと渦の動きが見えるように,物理現象を直観的に理解する助けとなるでしょう.この提案が,物理好きを増やし,理学や工学を選ぶ学生を増やすことを切に期待しています.
受賞のご感想
簡易な内容の応募にも関わらず,ご評価いただき本当にありがとうございます.
教育の観点から私たちが目論んだのは,正しくこの簡易・単純性にあります.身近な自然を考察する科学において,自然の単純さという本質を如何に摘出するか.このカメラは,時間変化をパラメータに自然を異なる観点から描くことができます.また,粗削りなデータだからこそ,思考の余地が生まれます.賞をいただけたこと以上に,このカメラに出会えたことに感謝いたします.本当にありがとうございました.
センチュリーアークス賞
・受賞者
東京大学工学系研究科 包潤秋(バオジュンシュウ)さん
・活用アイデアのタイトル
「ステレオ・イベントカメラによるオブジェクトベースビジュアルSLAM」
受賞者の皆様,誠におめでとうございます!お手元のイベントカメラを活用し,さらなる研究の発展にお役立ていただけることを期待します.
各受賞作品の概要については,弊社ウェブサイトをご覧ください.
(https://centuryarks.com/newsrelease/7802/)
イベントカメラ これからの取り組み
弊社はイベントベース技術が多くの分野で革新的なソリューションとなると確信し,実用化に向けた取り組みを着実に進めています.
イベントカメラ SilkyEvCam®製品には,これまでのSilkyEvCam®(VGA)およびHDモデルに加え,複数の電力モードを備え,ウェアラブルデバイスに最適なカメラモジュール GenX320 4×5をラインナップしました.また,イベントカメラ・ユーザーの皆様から多くのご要望いただいていた,イベントデータとフレームデータを視差なく同時取得が可能な派生製品 BothViewも新たに発売しております.
さらに,より多くの人がイベントベース技術を身近に感じていただけるよう,ある用途に特化したIot機器も開発中です.
弊社製品やサービスについてのご質問・ご相談は,お気軽にご連絡ください.
本件についてのお問い合わせ: pr@centuryarks.com